愛媛で必要な耐震等級を解説!南海トラフ地震に備える家づくりの基準

愛媛で必要な耐震等級を解説!南海トラフ地震に備える家づくりの基準
愛媛県で家づくりを考えるとき、「耐震等級」はご家族の未来を守るために最も重要な基準の一つです。特に、いつ発生してもおかしくないとされる南海トラフ地震への具体的な備えは、この愛媛の地で暮らす私たちにとって避けては通れない課題です。この記事では、まず耐震等級の基本的な違い(等級1・2・3)と、それぞれの基準が何を意味するのかを分かりやすく解説します。

その上で、なぜ愛媛県でこそ高い耐震性が求められるのか、南海トラフ地震の公式な被害想定(想定震度や津波リスク)というデータに基づいて、その理由を明らかにします。

そして、最も重要な結論として、私たちが愛媛の家づくりにおいて「耐震等級3」が不可欠だと考える理由と、それを新築やリフォームでどう実現していくか、さらには活用できる補助金制度まで、具体的な道筋をご提案します。

この記事が、皆様の「賢明な家づくり」の確かな一歩となることを願っています。

【免責事項】本記事に掲載されている情報は、2025年10月時点で信頼できると判断した公的機関の発表や専門機関のデータに基づき作成されています。しかし、これらの情報は法律の改正や新たな研究結果によって変更される可能性があります。

記事で紹介する補助金・助成金制度については、各自治体(愛媛県、松山市、新居浜市、四国中央市、今治市など)によって条件や募集期間、予算が異なります。ご利用を検討される際は、必ず最新の情報を各自治体の公式ホームページでご確認いただくか、担当窓口まで直接お問い合わせください。

私たちは、この記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いかねますことをあらかじめご了承ください。家づくりや耐震改修の具体的な計画は、必ず専門家にご相談の上、ご自身の責任においてご判断ください。

耐震等級とは?地震から家を守る3つのレベルの基礎知識

「耐震等級」という言葉はよく耳にしますが、等級1、2、3が具体的にどう違うのか、ご存知でしょうか。これは2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき、地震に対する建物の強さを分かりやすく示す共通の「ものさし」です。

この制度は、主に2つの異なる揺れを想定して性能を評価します。

極めて稀に発生する(数百年に一度程度)
大地震(震度6強~7相当)

この揺れに対して、建物が「倒壊・崩壊しないか」を評価します。

稀に発生する(数十年に一度程度)
中規模の地震(震度5強相当)

この揺れに対して、建物が「損傷しないか」を評価します。

この2つの視点で、3つのレベルが設定されています。

耐震等級1(建築基準法ギリギリ)の基準と想定レベル

耐震等級1 は、1981年に導入された「新耐震基準」とほぼ同等の、建築基準法で定められた「最低限の耐震性能」を満たす水準です。

出典)耐震等級1〜3とは?違いや調べ方など、地震に強い家のポイントを解説 – LIXIL

  • 数百年に一度の大地震(震度6強~7)で、「即座には倒壊・崩壊しない」レベル。
  • 数十年に一度の中規模地震(震度5強)で、「損傷しない」レベル。

ここで最も注意すべきは、大地震に対する基準が「倒壊はしない」という点です。これは「人命を守ること」を最優先の目的としており、建物が大きな損傷を受けることは許容されています。

つまり、地震の後に大規模な修繕が必要になったり、最悪の場合、損傷がひどくて住み続けられず、建て替えが必要になったりする可能性が残されている基準です。あくまで「法律ギリギリの基準」であるとご理解ください。

耐震等級2(長期優良住宅レベル)の基準と想定レベル

耐震等級2 は、等級1の「1.25倍」の地震力に耐えられる強さを持つ水準です。

  • 災害時の避難場所として指定される「学校」や「病院」と同等の耐震性です。
  • また、住宅の品質が長期間保たれることを認定する「長期優良住宅」の認定を受けるための必須条件の一つでもあります。

出典)耐震等級1〜3とは?違いや調べ方など、地震に強い家のポイントを解説 – LIXIL
(出典)耐震等級1・2・3の違いは?等級を高めるメリット・デメリットや家づくりのコツを解説 – 大和ハウス

地域の安全を守るべき公共施設がこの基準であることからも、等級1との間には明確な安全性の差があることが分かります。

耐震等級3(消防署や警察署レベル)の最高基準と安心度

耐震等級3 は、等級1の「1.5倍」の地震力に耐えられる強さを持つ、 住宅性能表示制度における最高の等級 です。

出典)耐震等級1〜3とは?違いや調べ方など、地震に強い家のポイントを解説 – LIXIL

  • 災害発生後の救助活動や復興の拠点となる「消防署」や「警察署」など、最も重要な施設に求められる基準です。
  • これらの施設は、大地震の後でもその機能を維持し、活動を継続できなければならないため、この最高基準で建設されます。

ご自身の家をどのレベルに設定するかは、「一時的な避難所(等級2)」のレベルを目指すのか、それとも「防災活動の拠点(等級3)」と同じレベルの安心感を求めるのか、という選択に他なりません。

項目 耐震等級1 耐震等級2 耐震等級3
耐力 建築基準法レベル(1.0倍) 等級1の 1.25倍 等級1の 1.5倍
大地震(震度6強~7) 倒壊はしないが、大きな損傷を受ける可能性あり 倒壊せず、損傷は軽微(補修が必要な場合あり) 倒壊せず、損傷は極めて軽微
中規模地震(震度5強) 損傷しない 損傷しない 損傷しない
地震後の居住性 大規模修繕や建て替えが必要な場合がある 修繕すれば居住継続の可能性が高い 軽微な修繕で居住継続の可能性が非常に高い
基準となる建物 一般住宅 学校、病院(避難所) 消防署、警察署(防災拠点)

出典)耐震等級1・2・3でどう違う?耐震の基礎!【2025年版】耐震等級1〜3とは?違いや調べ方など、地震に強い家のポイントを解説 – LIXIL
住宅性能表示制度 かんたんガイド – 国土交通省 に基づき作成

なぜ愛媛で耐震等級が重要なのか?南海トラフ地震の想定被害

耐震等級の違いが分かったところで、次に「なぜ、ここ愛媛県で耐震等級がそれほどまでに重要なのか」という、私たちに直結する問題を見ていきます。

その最大の理由は、言うまでもなく「南海トラフ巨大地震」の脅威です。

なぜ愛媛県の被害想定がこれほどまでに深刻なのでしょうか。

それは、愛媛県が巨大な南海トラフの震源域の直上、あるいは極めて近い位置にあり、 地震のエネルギーが直接伝わる宿命にあるからです。

さらに、松山平野をはじめとする沿岸部の多くは、河川が運んだ土砂でできた「堆積平野(沖積平野)」と呼ばれる地盤です。こうした柔らかい地盤は、地震の揺れを増幅させやすい(揺れやすくなる)特性があり、これが「震度7」という最大級の揺れが想定される大きな理由となっています。

これは遠い未来の話ではなく、私たちが住むこの愛媛県が深刻な被害を受けると、国や県が公式に想定している現実的なリスクです。

愛媛県が想定する最大震度と津波の危険エリア

愛媛県が公表している「地震被害想定調査結果」は、私たちが目をそむけてはならない事実を示しています。

出典)愛媛で想定される災害 – 愛媛県

  • 最大震度 : 県内の広範囲で 震度6強以上 の激しい揺れが予測されています。特に、 西条市、松山市、宇和島市 などを含む多くの市町で、最大震度である「震度7」に達する可能性が指摘されています。
  • 津波 : 揺れだけでなく、沿岸部では津波による甚大な被害が想定されています。例えば、 松山市で3.9m 、 今治市で3.3m の津波が予測される一方、 宇和海沿岸では9mから10mを超える 巨大な津波が到達する危険性が示されています。

出典)愛媛県地震被害想定調査 – 西条市南海トラフ地震の基礎知識 – 伊予市
愛媛県地震被害想定調査結果(第一次報告)について – 新居浜市

このデータは、愛媛県が地震動と津波の両方から極めて高い脅威にさらされていることを客観的に示しています。

さらに、県の被害想定は、最悪のシナリオにおいて、具体的な被害数を推計しています。

  • 死者 : 16,032人
  • 建物の全壊 : 243,628棟
  • 避難者数(発災1ヶ月後) : 558,902人

出典)愛媛で想定される災害 – 愛媛県

注目すべきは、死者の内訳です。津波による犠牲者(8,184人)が最も多い一方で、建物の倒壊など「揺れ」そのものによる死者も6,210人と予測されています。これは、沿岸部以外に住む方にとっても、決して他人事ではないことを意味します。

そして、県民の多くにあたる約56万人が避難生活を強いられるという想定は、公共の避難所(耐震等級2レベル)が飽和状態になり、社会機能が麻痺する事態を示唆しています。

市町名 最大震度 最大津波高 (m) 想定死者数 (人) 想定全壊棟数 (棟)
松山市 7 3.9 715 35,759
今治市 6強 3.3 641 9,096
新居浜市 7 3.4 1,841 35,169
西条市 7 3.4 3,648 33,132
宇和島市 7 10.1 2,568 32,473
愛媛県合計 16,032 243,628

出典)愛媛県地震被害想定調査結果について(愛媛で想定される災害 – 愛媛県)に基づき作成

耐震等級1・2の住宅が「本震」や「繰り返す余震」で倒壊するリスク

愛媛県の公式想定で示された「全壊24万棟」という数字。この中には、建築基準法レベルである 耐震等級1 の住宅が数多く含まれると考えられます。「倒壊はしない」はずの等級1がなぜ倒壊リスクにさらされるのでしょうか。

その答えは「繰り返す揺れ」にあります。

大地震は、「本震」一発で終わりではありません。本震と同レベルの強い揺れが再び襲ったり(2016年の熊本地震がまさにそうでした)、無数の「余震」が続いたりします。

出典)「耐震等級は意味がない」と言われてしまうのはなぜ?後悔しないために知ってほしい耐震等級3の必要性を解説! | KONOHANA STYLE MAGAGINE – 木の花ホーム

耐震等級1の基準は、あくまで「一発目の大きな揺れ」で倒壊しないことを想定しています。

しかし、その一発目の揺れで建物がすでにダメージを受け、見えない内部が損傷していたらどうなるでしょうか。その状態で二発目の揺れや、続く余震を受ければ、耐えきれずに倒壊に至る危険性が高まります。

出典)一歩上の耐震とは|繰り返す地震にも構造性能が低下しない耐力壁 Endure Wall(エンダーウォール)ポラス暮し科学研究所

これは耐震等級2の住宅でも無関係ではありません。等級2(等級1の1.25倍の強度)であっても、想定を超える揺れや繰り返す揺れによって損傷を受ければ、安全とは言い切れなくなります。

国や県がこれほど深刻な被害想定を公表しながら、法律上の最低基準が等級1に留まっています。これは、法律が守ろうとしているのが「最低限の人命」であり、「災害後の生活や資産」までは保証していないことを示しています。

この「公式リスク」と「法的基準」の間に存在するギャップを埋め、ご家族の真の安全を確保する責任は、家を建てる私たち一人ひとりにあるのです。

結論:愛媛の住宅に「耐震等級3」が必要不可欠である3つの理由

南海トラフ地震の深刻な被害想定を踏まえ、私たちは、これからの愛媛の家づくりにおいて「耐震等級3」はオプションではなく、必要不可欠な基本性能であると結論づけています。

その理由は、単なる計算上の強度や「安心感」といった曖昧なものではありません。過去の震災が証明した「事実」と、災害後の「生活」を見据えた、3つの明確な理由に基づいています。

理由1:南海トラフ地震の「本震」後も安全に住み続けるため

耐震等級3の真価は、2016年に発生した「熊本地震」によって、現実世界で証明されました。

この地震では、住宅性能表示制度が導入されて以降に建てられた家が、震度7の激しい揺れに2度も見舞われるという、極めて過酷な状況に置かれました。

国土交通省が実施した詳細な被害調査の結果は、衝撃的とも言えるほど明確でした。

  • 耐震等級3 の木造住宅(16棟)のうち、 倒壊または大破した建物はゼロ棟 でした。
  • 耐震等級2 の住宅(14棟)も、 倒壊・大破はゼロ棟 でした。
  • 一方、建築基準法レベル( 等級1相当 )の住宅(301棟)では、 6.3%が倒壊・大破 しました。

出典)「熊本地震における建築物被害の原因 分析を行う委員 … – 国土交通省

しかし、注目すべきは「無被害」の割合です。

  • 耐震等級3 では、16棟中14棟( 87.5% )が「無被害」でした。
  • 耐震等級2 では、14棟中9棟(64.3%)が「無被害」で、残りの5棟( 35.7% )は「軽微・小破」の 何らかの損傷 を負っていました。
被害レベル 耐震等級3 (16棟) 耐震等級2 (14棟) 建築基準法レベル (等級1相当) (301棟)
倒壊 0棟 (0.0%) 0棟 (0.0%) 7棟 (2.3%)
大破 0棟 (0.0%) 0棟 (0.0%) 12棟 (4.0%)
軽微・小破 2棟 (12.5%) 5棟 (35.7%) 101棟 (33.6%)
無被害 14棟 (87.5%) 9棟 (64.3%) 181棟 (60.1%)

出典)国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書【https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf】 に基づき作成

この事実が示すのは、等級2が「命を守る(倒壊しない)」レベルはクリアしているものの、3割以上の住宅が損傷を負っており、「災害後すぐに元の生活に戻れる」レベルには至らない可能性を示唆しています。

対して、等級3は「命を守る」というレベルを超え、「その後の生活を守る」レベルの性能であるということです。

愛媛県で想定される56万人の避難者。この一人になることなく、本震の後も住み慣れた我が家で家族と安全に過ごせること。これこそが、等級3がもたらす最大の価値です。

理由2:「繰り返す余震」による被害(損傷)を最小限に抑えるため

熊本地震は、「繰り返す揺れ」に対する耐性がいかに重要かを私たちに突きつけました。

耐震等級3の住宅がなぜ無事だったのか。それは、等級1の1.5倍という圧倒的な余裕(強度)によって、一発目の揺れによる損傷を「極めて軽微」または「無被害」に抑え込めたからです。

出典)耐震等級3の建物は、震度5の繰り返しにどこまで耐えるのか? – 株式会社イー・アイ・ジー・シー

建物にダメージが蓄積しなければ、その後に続く二発目の本震や、無数の余震にも耐え抜くことができます。

逆に、一発目で損傷してしまった等級1や等級2の住宅は、揺れが繰り返されるたびにダメージが上乗せされ、最終的な倒壊へとつながっていきます。

南海トラフ地震もまた、一度の本震で終わるとは誰も保証できません。繰り返す揺れによる「ダメージの蓄積」を防ぐことこそが、家を生き残らせる鍵となります。

理由3:住宅の資産価値を長期的に維持するため

住宅は、ご家族にとって最大の「資産」です。その価値は、災害に対する強さと直結しています。耐震等級3を選ぶことは、安全面だけでなく、長期的な経済合理性においても明確なメリットをもたらします。

1. 資産価値の維持

熊本地震で証明された通り、等級3の住宅は大規模地震の後もその価値を維持できる可能性が非常に高いです。一方、大きな損傷を受けた住宅は、たとえ倒壊を免れても資産価値は著しく下がってしまいます。

出典)「耐震等級3は意味がなかった」「耐震等級1・2でも十分だった」と後悔しない家づくりの方法 | トキワシステム

2. 地震保険料の割引

耐震等級は地震保険料に大きく影響します。等級3の住宅は、最大の割引率である「50%割引」が適用されます。これに対し、等級2は30%割引、等級1はわずか10%割引に留まります。

出典)地 震 保 険 基 準 料 率 表 – 損害保険料率算出機構

3. 住宅ローンの優遇

金融機関は、耐震等級3の住宅を「担保価値が高く、低リスクな資産」と評価します。これにより、住宅ローンの金利優遇措置(【フラット35】Sなど)を受けられる可能性が高くなります。

出典)“耐震等級3”の性能は?物件選びで後悔しないためのポイント …

初期コストは確かに増えるかもしれません。しかし、保険料の削減や有利なローン条件、そして何よりも「被災しなかった」場合の修繕費用の削減を考えれば、耐震等級3は単なる「コスト」ではなく、家族の安全と資産を守るための最も「賢明な投資」と言えるのです。

愛媛県で耐震等級3の住宅を実現する具体的な方法

「耐震等級3」が愛媛の家づくりに不可欠であることはご理解いただけたかと思います。では、それを具体的に実現するにはどうすれば良いでしょうか。新築の場合と、すでにお住まいの住宅(中古住宅)の場合に分けて、その方法と注意点を解説します。

新築で「耐震等級3」を取得する際の費用目安と注意点

新築で耐震等級3を取得するには、設計段階からの緻密な計画が必要です。

費用目安

耐震等級3の「認定」を正式に取得するためには、通常の設計・工事費に加えて、追加の費用がかかります。

  • 構造計算費用 : 建物の安全性を詳細に検証するための計算費用として、約20万円~40万円程度。
  • 住宅性能評価申請費用 : 第三者機関による評価を受け、認定書を取得するための申請費用として、約10万円~40万円程度。
  • 追加工事費用: 壁量を増やしたり、強度の高い建材を使ったり、接合部を強化したりするための工事費用として、数十万円~100万円以上。

出典)耐震等級3にするために必要な費用を分析!お金をかけるメリットは? | titel (タイテル)耐震等級1から3までの家の建設方法と費用の違い:奈良、工務店、一級建築士

最も重要な注意点:「許容応力度計算」の確認

実は「耐震等級3」には、その安全性の計算方法にレベルがあることをご存知でしょうか。 簡易的な計算方法(品確法の「仕様規定」。主に壁量で判断)ではなく、建物全体にかかる力(応力)や変形を、一棟ごとに精密に計算する「許容応力度計算」(建築基準法の「構造計算」の一種)に基づいているかどうかが、品質を見極める上で非常に重要です。

出典)耐震等級と許容応力度計算について – いなほ工務店

この計算手法は高い技術力を必要としますが、安全性の信頼度が格段に高まります。

私たち コウヨウは、お客様に最高の安全をお届けするため、この「許容応力度計算」を標準 としてご提案しています。これは、見えない部分にこそ誠実でありたいという、私たちの家づくりに対する姿勢の表れです。>>性能へのこだわりはこちら

既存住宅・中古住宅の耐震診断とリフォーム・改修の手順

すでにお住まいの家や、購入を検討している中古住宅の耐震性を高める場合、まず「現状を知る」ことから始まります。

ステップ0:まずはご自宅の築年で確認しましょう

耐震診断の前に、まずはご自宅がいつ建てられたか(建築確認日)をご確認ください。それによって、取るべき次の行動が明確になります。

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前(旧耐震基準): 性能不足の可能性が極めて高い状態です。大地震で倒壊するリスクが高いため、早急に自治体の「無料耐震診断」(ステップ1)を申し込むことを強く推奨します。
  • 1981年(昭和56年)6月~2000年(平成12年)5月(新耐震基準・等級制度前): 法律上、耐震等級1相当は満たしていますが、熊本地震ではこの基準の住宅でも6.3%が倒壊・大破しました。「繰り返す揺れ」には対応できない可能性があるため、ご不安な方は耐震診断(ステップ1)をご検討ください。
  • 2000年(平成12年)6月以降(等級制度後): 新築時に「住宅性能評価書」を取得している可能性があります。もし書類がなく、等級が不明な場合は、等級1で建てられている可能性も否定できません。

ステップ1:耐震診断の実施

専門家(建築士など)に「耐震診断」を依頼し、現在の家の耐震性能を正確に把握します。図面の確認や現地調査を通じて、構造上の弱点を特定します。この診断費用については、後述する自治体の補助金を活用できる場合がほとんどです。

ステップ2:耐震改修計画と工事

診断結果に基づき、どの部分をどう補強すれば安全性を高められるか、具体的な改修計画を立てます。

主な改修工事の例 :

  • 基礎のひび割れ補修や、鉄筋の入っていない基礎の増し打ち
  • 壁への筋交い(すじかい)や構造用合板(耐力壁)の追加
  • 柱と梁(はり)の接合部への耐震金物の設置
  • 屋根を重い瓦から軽量な金属屋根などに葺き替える(屋根の軽量化)

出典)耐震補強を木造住宅に施す費用はいくら?相場や工事の流れを解説 – an cube(アンキューブ)

費用目安: 一般財団法人日本建築防災協会の調査によれば、木造住宅の耐震改修工事費は、100万円~150万円の価格帯が最も多いとされています。2階建て住宅の場合、費用の中心的な価格(中央値)は約190万円となっています。

出典)耐震工事の費用はいくら?予算の目安や利用できる補助金制度 …【伊予銀行】

愛媛で耐震住宅に強い工務店・ハウスメーカーの選び方

耐震住宅の実現には、信頼できるパートナー(工務店・ハウスメーカー)選びが最も重要です。価格やデザインだけでなく、以下の基準で判断することをおすすめします。

  • 耐震等級3が「標準仕様」か: 高額なオプションとしてではなく、標準仕様として耐震等級3を提供しているか。これは、その会社が耐震性をどれだけ重要視しているかの表れです。
  • 計算の根拠が明確か: 「耐震等級3相当」といった曖昧な表現ではなく、前述の「許容応力度計算」など、詳細な構造計算を全棟で実施し、その結果を顧客に分かりやすく説明できるか。
  • 実績と専門性: 高性能住宅や耐震住宅の豊富な施工実績があるか。デザインだけでなく、性能面に関する専門知識(高気密・高断熱など)も併せ持っているか。
  • 公的な登録の有無: 特にリフォームの場合、自治体の補助金利用の条件となる、愛媛県の「木造住宅耐震改修事業者」として登録されているか。

【耐震住宅・耐震診断のご相談はこちら】

南海トラフ地震への備えは、待ったなしの課題です。

私たちコウヨウは、愛媛の気候風土を熟知した上で、最高の安全性(耐震等級3・許容応力度計算)と、洗練されたデザイン、そして快適性(高気密・高断熱)を両立する家づくりを追求しています。(※性能へのこだわり)

「私たちの家は本当に大丈夫?」

「新築で最高の安全を手に入れるには?」

「リフォームで耐震性を上げるにはいくらかかる?」

そうしたご不安や疑問をお持ちの方は、ぜひ一度私たちにご相談ください。
まずは、私たちの家づくりに対する考え方や、具体的な性能、デザイン事例をまとめた資料をご覧になりませんか?

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愛媛県で活用できる耐震診断・リフォームの補助金・助成金制度

既存住宅の耐震性を高めたくても、費用がネックになっている方も多いかもしれません。愛媛県および県内の市町村は、南海トラフ地震への備えとして、住宅の耐震化を促進するための手厚い補助金制度を設けています。

これらは、旧耐震基準(1981年5月以前)の住宅の危険性を行政が深刻に受け止め、その改修を社会全体の課題として支援するものです。

愛媛県や各市町村(松山市・今治市など)の補助金制度の概要

愛媛県の補助金制度は、耐震化のステップに合わせて幅広く用意されています。

出典)建築物の耐震化への支援について – 愛媛県庁公式ホームページ

  • 耐震診断 : 現状の耐震性を調べるための費用
  • 耐震改修設計 : 診断結果に基づき、具体的な補強計画を設計するための費用
  • 耐震改修工事 : 実際に補強工事を行うための費用
  • 耐風改修工事 : 耐震改修と同時に行う、屋根の耐風性を高める工事

これらは県と市町村が連携して行っているため、お住まいの市町村によって窓口や細かな条件が異なります。

補助金申請の流れと対象となる条件

これらの補助金を利用するには、いくつかの共通した条件と、絶対に守るべき手順があります。

対象となる主な条件

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前 に着工された木造住宅であること。(これが「旧耐震基準」と呼ばれるものです。)
  • 申請者が市税などを滞納していないこと。
  • 改修工事は、愛媛県に登録された「木造住宅耐震改修事業者」が行うこと。

出典)木造住宅の耐震診断・耐震改修工事等に係る費用の一部を補助します – 愛南町

最も重要な手順

必ず、工事の「契約」や「着工」をする前に、自治体の窓口に相談し、「補助金の交付決定」を受ける必要があります。

事前の相談なく進めてしまった工事は、原則として補助の対象外となりますので、くれぐれもご注意ください。

出典)松山市木造住宅耐震改修等補助事業 松山市公式ホームページ PCサイト

ここでは、特に人口の多い松山市と今治市の制度を例にご紹介します。(※2025年10月時点の情報です。年度によって変更されるため、必ず最新情報をご確認ください)

補助金の種類 松山市 今治市 主な条件(共通)
耐震診断 無料(派遣制度)
または最大4万円補助
無料(派遣制度)
または最大5万円補助
1981年5月以前着工の木造住宅
耐震改修設計 改修補助に含む
(上限20万円)
最大20万円
(費用の3分の2)
上部構造評点1.0以上を目指す計画
耐震改修工事 費用の80%
最大 115万円
費用の80%
最大 115万円
県登録事業者が施工
耐風改修工事
(屋根など)
追加補助:最大55.2万円 追加補助:最大55.2万円 耐震改修と同時に実施

出典)松山市木造住宅耐震診断事業松山市木造住宅耐震改修等補助事業今治市の木造住宅耐震に関する補助金のご案内耐震改修設計費用の一部に補助します | 今治市耐震改修費用の一部に補助します | 今治市 に基づき作成

このように、旧耐震基準の住宅にお住まいの場合、耐震診断は実質無料(自己負担なし)で受けられる市町村がほとんどです。まずはご自宅の現状を知るために、この制度を活用しない手はありません。

愛媛の耐震等級に関するよくある質問(FAQ)

最後に、耐震等級に関して多く寄せられるご質問にお答えします。

Q.耐震等級3の家にデメリットはありますか?

A.多くのメリットがある一方、いくつかの留意点も存在します。

建築コストの増加: 最も大きな点は初期費用の増加です。等級1に比べ、強度の高い建材の使用や壁量の増加、詳細な構造計算(許容応力度計算など)が必要となるため、コストは上がります。 しかし、本記事の「理由3」で解説した通り、この初期投資は地震保険料の50%割引や、災害時の修繕費用の大幅な削減、そして何より資産価値の維持という形で、長期的に回収される「賢明な投資」であると私たちは考えています。

間取りの制約: 高い耐震性を確保するためには、耐力壁や柱をバランス良く配置する必要があります。これにより、広大な吹き抜けや壁一面の大開口といった、デザインが一部制約される場合があります。

出典)耐震等級3は後悔するのか|耐震等級1・2でも十分と言われる理由と「耐震等級3相当」についても – 名古屋で注文住宅を建てるなら国松工務店にご相談ください

しかし、これは設計者の技術力によって大きく左右される部分です。優れた設計者は、構造力学の要請を満たしながら、開放的で美しい空間デザインを両立させることが可能です。例えば、私たちの施工事例(https://1-koyo.com/works/をご覧いただければ、安全性能とデザイン性を両立した空間をご確認いただけます。

Q.中古住宅の場合、耐震等級を後から確認する方法はありますか?

A.中古住宅の耐震性能を確認するには、いくつかの方法があります。

  • 「住宅性能評価書」の確認: 最も確実な方法です。2000年の品確法(耐震等級が定められた法律)施行後であれば、新築時にこの評価書を取得している場合があります。不動産会社に確認してみましょう。
  • 「長期優良住宅認定通知書」の確認: 長期優良住宅の認定を受けている場合、自動的に耐震等級2以上が確保されています。
  • 専門家による「耐震診断」の実施: 上記の書類がない場合、正確な性能を知る唯一の方法は、専門家(建築士)に「耐震診断」を依頼することです。これは前述の補助金制度の対象となる場合があります。

出典)耐震等級の調べ方とは!新築・中古住宅の確認方法、等級別メリットも解説

「1981年6月以降の建築確認」であれば、法律上、新耐震基準(耐震等級1に相当)を満たしていることになりますが、それ以上の等級(2や3)であるかまでは分かりません。

Q.耐震等級を上げると地震保険料は安くなりますか?

A.はい、明確に安くなります。

地震保険の保険料は、建物の耐震等級に応じて割引が適用される制度が設けられています。

出典)地 震 保 険 基 準 料 率 表 – 損害保険料率算出機構

地震保険料の割引率

  • 耐震等級3: 50%割引
  • 耐震等級2: 30%割引
  • 耐震等級1: 10%割引

この保険料の差は、保険会社(損害保険料率算出機構)が「耐震等級3の住宅は、地震による損害を受けるリスクが等級1の住宅に比べて著しく低い」と金銭的に評価していることの証明です。

等級3を選ぶことは、ご家族の安全を守るだけでなく、毎年の保険料負担という点でも、直接的かつ継続的な経済的メリットとなるのです。