愛媛のパッシブデザイン|気候を活かす設計手法とメリットを徹底解説

愛媛のパッシブデザイン|気候を活かす設計手法とメリットを徹底解説


愛媛県内で快適な家づくりを考えたとき、「パッシブデザイン」という言葉が選択肢に挙がる方は多いのではないでしょうか。光熱費が高騰する現代において、エアコンなどの機械にできるだけ頼らず、太陽の光や熱、自然の風といったエネルギーを使って快適に暮らす設計思想は、非常に合理的です。

しかし、その一方で「愛媛の気候で本当に効果があるのか?」「具体的にどのような設計手法なのか?」「費用はどれくらいかかるのか?」といった、具体的な疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、愛媛の気候特性を踏まえ、パッシブデザインがなぜ有効なのか、その具体的な設計手法と、導入によって得られる4つの大きなメリット、そして後悔しないための注意点まで、専門的な知見から詳しく解説します。

本記事で解説する主な内容

  • 愛媛県内に4つの異なる気候区分が混在するという事実
  • パッシブデザインを実現する5つの基本設計要素
  • 光熱費削減や健康維持といった具体的な4つのメリット
  • 初期費用や土地条件に関する注意点(デメリット)
  • 愛媛で信頼できる工務店・設計事務所を見極める方法

この記事が、愛媛で「本当に快適で、賢い家づくり」を実現するための一助となれば幸いです。

【免責事項】

本記事で紹介する情報は、2025年11月時点の信頼できる情報源に基づき作成されていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。具体的な設計や建築コスト、補助金制度などに関する最新かつ詳細な情報については、必ず専門の工務店や設計事務所にご相談ください。

また、記事内で引用する各調査データや健康に関する記述は、一般的な傾向を示すものであり、個別の健康状態を診断・保証するものではありません。

愛媛の気候特性とパッシブデザインの重要性

パッシブデザインとは、特定の高価な機械設備に頼るのではなく、建築設計そのものの工夫によって、自然エネルギー(太陽光、風など)を最大限に使い、快適な室内環境を作ろうとする設計思想であり、そのための手法です。

出典)パッシブデザインとパッシブハウスの違いとは?メリット・デメリット解説 – 418BASE 家づくりブログ

この手法が、ここ愛媛県においてなぜ重要であり、論理的な答えとなり得るのか。その根拠は、愛媛県特有の気候風土にあります。

「夏は涼しく冬は暖かい」を実現する5つの基本設計要素

パッシブデザインは、どれか一つの技術を指す言葉ではありません。以下の5つの基本要素を、その土地の気候に合わせて最適に組み合わせて(バランスさせて)初めて成り立つ、設計手法の総称です。

1. 断熱(高気密・高断熱)

家全体を高性能な断熱材やすき間のない施工で「魔法瓶」のような状態にします。これにより、外の暑さや寒さの影響を最小限に抑え、一度快適になった室温を長く保つことができます。これは他の4つの要素を活かすための大前提となります。

2. 日射遮蔽(にっしゃしゃへい)

夏の強い日差しが窓から室内に入り込み、室温を上げるのを防ぐ設計です。日本の伝統的な「庇(ひさし)」や「すだれ」は、この日射遮蔽の優れた例です。

出典)SDGsコンパス

3. 自然風利用(通風)

その土地でよく吹く風(卓越風)や、室内の温度差によって空気が自然に流れる力を使い、エアコンに頼らずとも室内に涼しい風を通す設計です。

出典)タイセーハウジング

4. 昼光利用

自然の光を室内の奥まで効果的に取り入れることで、日中の照明エネルギーを減らす設計を指します。

出典)SDGsコンパス

5. 日射熱利用(暖房)

冬の低い角度から差し込む、暖かい太陽の「熱」を意図的に室内に取り込みます。その熱を床や壁に蓄える(蓄熱する)ことで、暖房エネルギーを減らす設計手法です。

出典)SDGsコンパス

重要なのは、これらの要素間に生まれる「トレードオフ(相反する関係)」を理解することです。

トレードオフの例

「冬に日射熱を取り入れよう(日射熱利用)」と窓を大きくすれば、

そのままでは「夏の日差しも入ってきて(日射遮蔽)」室温が上がりすぎてしまいます。

パッシブデザインによる解決

「庇の角度」を緻密に計算することで、

「夏の高い太陽光は遮り、冬の低い太陽光は取り込む」という設計の工夫だけで両立させます。

パッシブデザインの真価は、この相反する要求を、例えば「庇の角度」を緻密に計算することで、「夏の高い太陽光は遮り、冬の低い太陽光は取り込む」といった形で、 設計の工夫だけで両立させる点 にあります。

出典)夏至冬至春分秋分太陽南中高度角度と住宅の縁側軒先庇と日当り – 北島建築設計事務所

この高度なバランス調整こそ、設計者のスキルが最も問われる領域です。

瀬戸内海側と宇和海側で異なる愛媛の気候と設計のポイント

「愛媛の気候」と一口に言っても、瀬戸内海側と宇和海側、あるいは山間部で気候が大きく異なることは、皆さんも肌で感じていらっしゃることでしょう。気象庁のデータでも、降水量は瀬戸内側で少なく宇和海側で多いことや、地形が複雑なため風の状況が地域によって大きく異なることが示されています。

出典)松山地方気象台 – 気象庁

この「気候の違い」について、住宅の省エネルギー設計において決定的に重要な、客観的な基準があります。

それは、国土交通省が定める「平成28年省エネルギー基準」における「地域区分」です。

この区分は、日本全国を気候条件(主に冬の寒さ)に応じて8つのゾーンに分けるものです。

そして、この公式区分において、愛媛県は「4地域」「5地域」「6地域」「7地域」という4つもの異なる区分が混在する、全国的にも稀な複雑な県であることが示されています。

出典)H28省エネ基準(地域区分)

以下の表は、その具体例をまとめたものです。

地域区分 該当市町村(例) 気候的特徴(他の地域との比較)
4地域 久万高原町、新居浜市(旧別子山村) 寒冷地(岩手県盛岡市や長野県松本市に相当)
5地域 大洲市(旧肱川町、旧河辺村)、内子町(旧小田町) 準寒冷地(栃木県宇都宮市に相当)
6地域 (上記以外の多くの地域)
例:今治市、西条市、伊予市など
(関東平野部の多くに相当)
7地域 松山市、宇和島市、新居浜市(旧新居浜市)、愛南町 温暖地(東京都心部、大阪市、福岡市に相当)

出典:『H28省エネ準 地域区分』 を基に作成

この事実は、愛媛でパッシブデザインを考える上で非常に重要です。

例えば、温暖地である「7地域」(松山市)の断熱基準で設計した家を、そのまま寒冷地である「4地域」(久万高原町)に建てた場合、冬の寒さに耐えられない性能不足の家になってしまいます。

「愛媛の気候を活かす」とは、こうした 市町村レベルで異なる気候特性(地域区分)を設計者が正確に熟知し、それに応じて断熱仕様や窓の性能を最適化する 提案力を持つ、ということを意味します。

愛媛でパッシブデザイン住宅を建てる4つのメリット

パッシブデザイン、そしてその前提となる高気密・高断熱を採用した住宅は、そこに住むご家族に対し、経済的、身体的、そして心理的なメリットをもたらします。

自然エネルギー活用による光熱費(冷暖房費)の大幅な削減

最も直接的で分かりやすいメリットは、冷暖房エネルギー消費を抑えることによる「光熱費の削減」です。

高気密・高断熱化された住宅(魔法瓶のような家)は、外気温の影響を受けにくく、一度調整した室温を長く保つことができます。そのため、冷暖房の稼働率が大幅に下がり、光熱費の削減につながります。

出典)高気密・高断熱住宅のメリット・デメリット|家を建てるときの注意点 – グランディハウス

国土交通省が公表したZEH(ゼッチ)水準(パッシブデザインによって達成が容易になる高水準の省エネ住宅)の光熱費試算によれば、最近のエネルギー価格高騰を踏まえた試算(試算例②)において、 東京都(愛媛県の6・7地域に気候が類似)では、年間 53,000円 の光熱費削減効果 が示されています。

出典)省Gエネ住宅で節約できる年間の光熱費

この「年間53,000円」という数値は、後で触れるデメリット(初期費用)を考える上で重要な「投資対効果」の根拠となります。

一年を通じた室温の安定化と快適な室内環境の実現

パッシブデザイン住宅は、家全体の温度差が少なくなる「室温の安定化」が大きな特徴です。この「快適性」は、単なる主観的な感覚の問題ではなく、ご家族の「健康維持」に直結する非常に重要な要素です。

近年、国土交通省や厚生労働省が関わる複数の調査研究により、 不健康な室温と病気のリスクとの間に、明確な統計的なつながりがある ことが次々と明らかになっています。

出典)報道発表資料:住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告 – 国土交通省

以下の表は、その調査結果の一部をまとめたものです。

室温条件 関連する健康リスク リスク倍率・相関
室温18℃未満 脂質異常症(血中脂質が基準値を超える) 有意に多い
室温18℃未満 心電図の異常所見 有意に多い
就寝前 居間12℃未満 過活動膀胱(頻尿など) 有病率 1.4倍
寝室が寒い・乾燥している 睡眠の質 有意に悪い

出典:『住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第9回報告会』『厚生労働科学研究費補助金 令和2年度 報告書』を基に作成

これらのデータが示す事実は重大です。

室温が18℃未満の寒い家に住み続けることは、脂質異常症や心疾患のリスクを統計的に高める可能性があり、12℃未満の環境では過活動膀胱のリスクが1.4倍になることが示されています。

出典)スマートウェルネス住宅研究開発委員会(委員長:村上周三、東京大学名誉教授)は、2014 年度か

パッシブデザインによって室温を安定させること(特に冬場に室温18℃以上を保つこと)は、「快適な暮らし」の実現であると同時に、ご家族の将来的な病気のリスクを減らし、医療費を抑える「健康への投資」としての側面を持つのです。

結露やカビの抑制による住宅の長寿命化

冬場の窓や壁にびっしりと付く「結露」。これは見た目が不快なだけでなく、カビやダニの温床となり、アレルギーなどの原因にもなります。

さらに怖いのは、壁の内部で発生する「内部結露」です。これは目に見えないところで断熱材を濡らして性能を落とし、柱や土台といった大切な構造材を腐らせるため、住宅の寿命を著しく縮める原因となります。

高気密・高断熱住宅では、壁や窓の表面温度が外気温の影響を受けにくく、室温近くに保たれます。これにより、空気中の水蒸気が冷やされて水滴になる「結露」の発生を、根本的に抑えることができます。

出典)高気密高断熱の住宅とは?メリット・デメリットや施工方法の種類を詳しくご紹介します!

ただし、このメリットを実現するには重要な前提条件があります。

高気密化(すき間をなくすこと)は、同時に室内の水蒸気や汚染物質が逃げにくくなることも意味します。

出典)高気密・高断熱住宅のメリット・デメリット|家を建てるときの注意点 – グランディハウス

したがって、結露を確実に防ぎ、家を長持ちさせるためには、「高気密・高断熱」と「適切な計画換気システム(24時間換気など)」が必ずセットで機能している必要があります。

出典)高気密高断熱の住宅とは?メリット・デメリットや施工方法の種類を詳しくご紹介します!

開放的な間取りと自然光による心理的な心地よさ

一般的な断熱性能の住宅で、「吹き抜け」や「リビング階段」、「南向きの大きな窓」といった開放的な間取りを採用すると、どうなるでしょうか。

冬は冷たい空気が足元に降りてきて寒く(コールドドラフト)、夏は強い日差しで暑くなりすぎるため、快適性を我慢するか、過大な冷暖房費を払うかの二択になりがちです。

しかし、パッシブデザインによって家全体の断熱性・気密性が「魔法瓶」のように高められ、家中の温度差が少なくなっていれば、話は別です。

家が高性能であるという前提があって初めて、「開放的な間取り」や「自然光を取り入れる大きな窓」が、快適性や光熱費を犠牲にすることなく実現可能になります。

これは、住宅の「性能」が、建築家の「デザインの自由度」を制約するのではなく、むしろ支え、解き放つという関係性を示しています。

高性能なパッシブデザインは、「卓越した性能」と「洗練されたデザイン」という、通常は両立が難しい二つの要求をかなえるための、論理的な土台となるのです。

愛媛のパッシブデザインで後悔しないための注意点(デメリット)

多くのメリットがある一方、パッシブデザインはその特性を正しく理解せずに導入すると「こんなはずではなかった」という後悔につながる可能性もあります。ここでは、客観的なリスクとその対策について解説します。

注意点 1: 土地の立地条件

パッシブデザインは太陽光や風といった「自然エネルギー」を使うため、土地の立地条件に性能が大きく左右されます。

出典)タイセーハウジング

対策:

「日照シミュレーション」等を駆使し、不利な条件でも中庭や高窓で光・風を取り込む「設計者のスキル」で対策可能です。

出典)note

出典)ヤスナグデザインホーム

注意点 2: 初期費用(建築コスト)

高気密・高断熱施工は、高性能な建材や施工の手間により、一般的な住宅より初期費用が高くなる傾向があります。

出典)サイエンスホーム岡山

対策:

「初期費用」だけでなく、光熱費や医療費の削減も含む「ライフサイクルコスト(LCC)」の視点で、将来的なリターン(投資対効果)を評価することが不可欠です。

出典)国土交通省

注意点 3: 設計者のスキルへの依存

これが最大のリスクです。パッシブデザインは「製品」ではなく「設計手法」であるため、設計者のスキルに性能が大きく依存します。

出典)タイセーハウジング

対策:

気候の理解力、シミュレーション技術、相反する要求(夏の日射遮蔽と冬の日射熱利用)を両立させるバランス感覚を持った、信頼できる工務店・設計事務所を選ぶことが最も重要です。

出典)北島建築設計事務所

愛媛の気候を活かしたパッシブデザインの具体的な設計手法

では、パッシブデザインの5つの基本要素を、愛媛の気候(特に4〜7地域の多様性)において、具体的にどのような工法や数値目標で実現していくのかを解説します。

【断熱】UA値(外皮平均熱貫流率)を高める高気密・高断熱の施工

UA値(外皮平均熱貫流率)とは、住宅の「断熱性能」を示す客観的な数値です。

住宅全体(壁、屋根、窓など)から、平均してどれだけの熱量が外へ逃げていくかを示し、この数値が小さいほど断熱性能が高い(=熱が逃げにくい)ことを意味します。

出典)住宅の断熱性能を表す「UA値(外皮平均熱貫流率)」とは – 福岡工務店

2025年4月から、愛媛県(7地域など)を含むすべての新築住宅に「断熱等性能等級4」(UA値 0.87 W/㎡K)が法的に義務化されます。

出典)住宅の断熱性能を表す「UA値(外皮平均熱貫流率)」とは – 福岡工務店

しかし、これはあくまで「最低基準」です。パッシブデザインによる本当の快適性と省エネ性を求める上では、より高い目標値が設定されています。

断熱等性能等級 UA値(W/㎡K)(7地域) 性能レベルの目安
等級4 0.87 2025年の最低義務基準
等級5 0.60 ZEH(ゼッチ)基準
等級6 0.46 ZEH+(ゼッチプラス)水準。
寒冷地(4地域)の最低基準(0.46)と同等。
等級7 0.26 G3(HEAT20)水準。国内最高等級。

出典:『住宅の断熱性能を表す「UA値(外皮平均熱貫流率)」とは』『【5-7地域】外皮性能レベル別の断熱仕様例』 を基に作成

愛媛(7地域)において高いレベルのパッシブデザインを目指す場合、最低基準の0.87ではなく、少なくとも等級6(UA値 0.46) や、理想的には 等級7(UA値 0.26)といった数値を目標とすることが、冬の暖房エネルギーを大幅に減らす鍵となります。

出典)【5-7地域】外皮性能レベル別の断熱仕様例 – マグ・イゾベール

この高性能を実現するには、壁の内部に断熱材を入れる「充填断熱」と、建物の外側を断熱材で覆う「外断熱」(または両方を組み合わせた「付加断熱」)といった高度な工法と、後述する高い気密施工が不可欠です。

出典)高気密高断熱の住宅は快適?メリットやデメリット、注意点などを詳しく解説 | 日本ハウスHD

【日射遮蔽】夏の日差しを遮る「庇(ひさし)」や「すだれ」の設計

夏の室温上昇の最大の原因は、窓から入ってくる日射熱です。これを防ぐ「日射遮蔽」は、夏の快適性を左右する最も重要な設計要素の一つです。

庇(ひさし)や軒(のき)
最も基本的かつ効果的な手法です。日本の夏至(6月下旬)の太陽高度は非常に高い(東京で約78度)ため、南側の窓の上に適切な長さの庇を設計することで、夏の直射日光が室内に入るのを効果的に防げます。
すだれ・シェード・外付けブラインド
窓の「外側」で日差しをカットする部材は、室内のカーテン(一度熱を室内に入れてから遮る)と比べて、日射遮蔽効果が格段に高いとされています。
植栽(落葉樹)
窓の外に落葉樹を植えることも、パッシブデザインの一つです。夏は葉が茂って日差しを遮り、冬は葉が落ちて日差しを室内に通してくれます。

出典)北島建築設計事務所出典)SDGsコンパス

【日射熱利用】冬の日差しを室内に最大限取り込む窓の配置

冬の暖房エネルギーを減らすため、太陽の「熱」を無料で室内に取り込む手法が「日射熱利用」です。

窓の配置
南面に大きな窓を配置し、日射を最大限取り込むことが基本となります。
庇(ひさし)との関係
ここで前述の「日射遮蔽」との見事な両立が図られます。日本の冬至(12月下旬)の太陽高度は非常に低い(東京で約31度)ため、夏の日差しを遮るために設計された庇の「下をくぐり抜けて」、低い角度の日差しが室内の奥深くまで届くように設計します。

このように、庇という一つの建築部材が、季節による太陽高度の違いを利用し、夏は「遮蔽」、冬は「取得」という全く逆の機能を自動的(パッシブ)に果たすことこそ、パッシブデザインの合理性であり、設計の面白さでもあります。

出典)SDGsコンパス出典)北島建築設計事務所出典)note

【自然風利用】愛媛の卓越風を活かした「通風シミュレーション」

春や秋などの中間期に、エアコンに頼らず自然の風で快適に過ごすのが「自然風利用」です。

風配図(ふうはいず)の活用
設計の第一歩は、その土地の「卓越風(一年で最も頻繁に吹く風向き)」を知ることです。気象庁などが提供する「風配図」というデータを分析し、風の入口と出口を計画します。
通風シミュレーション
風配図のデータに基づき、建物や周辺環境を3Dモデル化し、風の抜け方を「通風シミュレーション」します。
これにより、単なる勘に頼るのではなく、論理的に窓の配置や吹き抜けの形を最適化し、最も効果的に風が通り抜ける「風の道」を設計します。

愛媛県は地形が複雑で、地域による風の状況が大きく異なるとされています。

出典)タイセーハウジング出典)松山地方気象台 – 気象庁出典)環境共生住宅とパッシブデザイン出典)note

例えば、松山市の卓越風と新居浜市の卓越風が異なるように、地域ごとの特性を把握することが重要です。「愛媛の気候を活かす」とは、こうした地域固有のデータを活用し、一棟ごとにシミュレーションを行うことを意味します。

愛媛でパッシブデザインに強い工務店・設計事務所の選び方

これまで見てきた通り、パッシブデザインの成功は、設計者のスキルに大きく依存します。愛媛県内で信頼できるパートナーを選ぶために、お客様ご自身が確認すべき具体的なチェックポイントを解説します。

パッシブデザインの施工実績や具体的な事例が豊富か確認する

単にデザインがおしゃれな事例ではなく、その住宅が「なぜその設計になったのか」というパッシブデザインの5つの要素に基づいた設計思想(例:庇の設計意図、通風計画)が説明されているかを確認しましょう。

また、その事例が愛媛県のどの地域(4〜7地域)で建てられたもので、その気候にどう対応したのかを具体的に確認することが重要です。

出典)H28省エネ準(地域区分)

性能数値(UA値、C値)を明確に提示し説明できるか

デザインや理念だけでなく、客観的な「性能数値」を明確に提示し、その意味を論理的に説明できるかは、技術力を見極める上で不可欠です。

UA値(断熱性能)
前述の通り、2025年の最低基準(0.87)ではなく、等級6(0.46)や等級7(0.26)といった、より高いレベルのUA値を標準仕様として目指し、全棟で実現しているかを確認します。
C値(相当隙間面積)
これは住宅の「気密性(すき間の量)」を示す指標で、数値が小さいほど高気密(すき間が少ない)ことを意味します。

出典)福岡工務店出典)あすなろ建築工房

ここで、UA値とC値の「関係性」と「優先順位」について、非常に重要な点をお伝えします。

住宅の性能を、高性能な冬の「ダウンジャケット」に例えてみましょう。

失敗例:チャックが開いたジャケット

UA値(羽毛の品質)
最高級(等級7)
C値(チャック)
全開(低気密 C値 2.0など)
   ↓

結果:すき間風で寒い。
断熱材の性能が発揮されない。

成功例:チャックを閉めたジャケット

UA値(羽毛の品質)
最高級(等級7)
C値(チャック)
密閉(高気密 C値 1.0以下)
   ↓

結果:暖かい。
断熱材の性能が最大限に発揮される。

住宅の性能は、まず『チャックを確実に閉める施工技術(=C値 1.0以下を達成する気密施工)』が大前提となり、その上で『羽毛の品質(=UA値)』を高めることに本当の意味があるのです。

だからこそ、最も重要なチェックポイントがあります。

UA値(断熱)は2025年に義務化されますが、C値(気密)は2009年に国の次世代省エネ基準から削除されており、法的な義務付けがありません。

出典)C値(相当隙間面積)とは – みずほ不動産販売

つまり、合法的に「チャックが全開(低気密)」の家が建つ可能性があるのです。

したがって、「法的に義務付けられていないC値を、あえて自主的に全棟で実測し、C値 1.0以下などの厳しい社内基準をクリアしているか」は、その工務店が性能の本質を理解している「本物」かどうかを見極めるための、最も信頼できる試金石となります。

地域の気候風土を理解した設計提案力があるか

「パッシブデザイン」という言葉を使うだけでなく、愛媛の気候特性に根ざした具体的な提案力があるかを確認します。

といった、シミュレーションと地域データに基づいた論理的な提案ができるかどうかが、スキルを判断する基準となります。

アフターメンテナンスや長期的なサポート体制の有無

パッシブデザイン住宅(高気密・高断熱住宅)の性能は、計画換気システム(24時間換気)が正しく機能し続けることが大前提です。この換気システムは、フィルター清掃や定期的な点検といったメンテナンスが不可欠です。

住宅の性能とご家族の健康を長期間維持するために、入居後のアフターメンテナンスやサポート体制が整備されているかを確認することは、初期費用と同様に重要です。

私たちコウヨウは、まさにこのパッシブデザインの考え方を家づくりの核に据えています。

愛媛の多様な気候風土(4〜7地域)を熟知し、「高気密・高断熱・省エネ・耐震」という客観的な性能を追求することはもちろん、その土地の光や風を読み解き、一邸一邸に最適な設計をご提案することを得意としています。

私たちは、法的な義務付けのない C値(気密性)についても全棟で実測 を行うなど、性能の本質(=まずはチャックを閉めること)を理解し、目に見えない部分にこそ誠実に向き合うことが重要だと考えています。

  • 「私たちの土地でもパッシブデザインは可能なのか?」
  • 「性能とデザイン、どちらも妥協したくない」
  • 「UA値だけでなく、C値までこだわった賢い家づくりがしたい」

そのようなお考えをお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちの家づくりについて詳しくお知りください。

愛媛の気候を活かし、「くらしを謳歌する」ための具体的な設計手法や性能、施工事例をまとめた資料をご用意しています。

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パッシブデザインに関するよくある質問

最後に、パッシブデザインに関して多く寄せられるご質問にお答えします。

Q.パッシブデザインとZEH(ゼッチ)の違いは何ですか?

A.パッシブデザインとZEH(ゼッチ:Net Zero Energy House)は、目指す方向は似ていますが、その定義が異なります。

  • パッシブデザイン: 設計手法・思想です。断熱、日射遮蔽、通風などを駆使し、住宅が「消費するエネルギーを最小限に抑える」ことを目指します。

    出典)418BASE 家づくりブログ

  • ZEH(ゼッチ): 住宅の性能認証・基準です。(1) 高断熱化と高効率設備による「省エネ」に加え、(2) 太陽光発電などによる「創エネ」を組み合わせ、年間の一次エネルギー消費量の収支を「ゼロ以下にする」ことを目指します。

    出典)環境省「住宅脱炭素NAVI」

関係性:優れたパッシブデザインは、ZEHの(1)「省エネ」部分を達成するための最も効果的かつ合理的な手段です。

パッシブデザインによって住宅のエネルギー消費(=燃費)を極限まで減らせば、ZEH達成(収支ゼロ)に必要な(2)「創エネ」(太陽光パネル)の搭載量を最小限に抑えることができ、建築コストの削減や屋根デザインの自由度向上にもつながります。

項目 パッシブデザイン ZEH (ゼッチ)
目的 エネルギー消費を「最小化」する エネルギー収支を「ゼロ以下」にする
カテゴリ 設計手法・思想 住宅の性能認証・基準
必須要素 断熱、日射遮蔽、通風など 高断熱、高効率設備、 創エネ(太陽光等)
創エネ 必須ではない 必須

Q.狭い土地や北向きの土地でもパッシブデザインは可能ですか?

A.可能です。ただし、設計の難易度が上がるため、前述した「設計者の高度なスキル」が必須となります。

南側に大きな窓が取れない場合でも、日照シミュレーションを駆使し、例えば隣家の影の影響を受けにくい「高窓(ハイサイドライト)」や「中庭」を設けて空からの光(天空光)を取り込んだり、建物の形状を工夫して風の通り道を作ったりするなど、不利な条件を設計力で補うことが可能です。

出典)パッシブデザインとダブル断熱 – ヤスナグデザインホーム

Q.建築費用は一般的な住宅と比べてどれくらい高くなりますか?

A.高性能な断熱材や窓、丁寧な気密施工により、初期費用(建築コスト)は高くなる傾向があります。

出典)パッシブデザインのデメリットは本当?京都の工務店が本音で語る、後悔しない家づくりの物語

この問いは、住宅を「消費」と捉えるか、「投資」と捉えるかで評価が全く異なります。

パッシブデザインの初期コストの差額は、「将来の光熱費」と「ご家族の健康」の双方を守るための『賢明な投資』であると、私たちは考えています。

この「ライフサイクルコスト(LCC)」と「健康への投資」という視点を持つことが、パッシブデザインの真の価値をご理解いただく上で、最も重要だと考えています。